(第38号) 2005年8月9日(火)
政策調査情報 連合北海道 政策道民運動局

■内容;許すな!!大増税特集
ストップ!大増税!!
サラリーマン、雇用労働者をターゲットにした大増税を許さない
 
政府税制調査会の小委員会は、2006年度以降の税制改正に向けた「個人所得課税に関する論点整理」を取りまとめました。しかし、その中身は、勤労者・子育て世帯に対する増税案のオンパレード。
 仮に主な増税案がそのまま実施されると、定率減税の縮小・廃止とあわせて、年収500万円の世帯で年間約20万円以上もの増税になるのです!賃上げ分やボーナスが、まるまる消えてしまう理不尽な増税、到底許すことはできません!
 ここ数年の税制や社会保障制度の負担増によって、家計負担は年々重くなっています。これ以上の増税にはガマンできません!
 政府税調は、今年の秋には来年度の税制改正に関する答申を出すことにしています。議論はこれからが本番。みんなのチカラで、政府の「超」大増税をストップさせましょう!
 
 ■年収・世帯別の増税額(所得税+住民税)
 給与収入
 
 夫婦片働き
 (子ども2人)
  夫婦片働き
 
  一人暮らし
 
300万円
400万円
500万円
600万円
700万円
 125,800円
 168,300円
 221,800円
 280,000円
 376,000円
 132,800円
 182,300円
 237,200円
 331,000円
 418,700円
  88,400円
 137,700円
 178,600円
 272,400円
 324,900円
※一定の要件
  ○給与所得控除を2/3(最低保障額65万円)に縮小
  ○配偶者控除・特定扶養控除を廃止  ○その他の控除は試算の対象外
  ○社会保険料は財務省の概算式を利用 ○税率の区分・適用範囲は現行のまま
  ○月の増税額は、一時金を4.8ヶ月(連合集計)
●ここが問題!政府の増税案
 
 政府税調小委員会が発表した増税案は、多くの問題点があります。特に、次の4つは私たちの暮らしに大きな影響を与えます。財政赤字を拡大した政府の責任はそっちのけ。負担だけを国民、とくにサラリーマンにシワ寄せする今回の増税案。
 国民に痛みを押しつける前に、歳出構
造の徹底した見直し、不公平税制の是正など、政府はやるべきことが沢山あるはずです。
 
●給与所得控除の縮小
 
 政府は、給与所得控除の水準が「実際に給与所得者が支出している必要経費に比べて多すぎる」として、控除を縮小しようとしています。
 給与収入に対する給与所得控除の水準は平均で約3割。これに対し、給与所得者の平均的な必要経費の支出額は、財務省の試算によれば7%前後。これが財務省の主張の根拠です。
 しかし、給与所得控除は、「勤務に伴って支出する費用の概算控除」だけでなく、「給与所得と他の所得との担税力調整」という役割など、様々な要素によって成り立っています。そうした要素を無視したまま、一方的に控除を減らすことは認められません!
 給与所得者は、毎月の賃金から税金が天引きされ、所得のほぼ100%が税務署に把握されています。しかし、自分で経費申告ができる自営業者などの所得は、なかなか正確に把握されていないのが実情です。政府も、こうした所得捕捉の差が依然として存在することを認めています。
 毎月源泉徴収で税金を納めている給与所得者をターゲットに増税を求めることは、「取りやすいところから取る」ことにほかなりません。まずは、誰もが税金を公平に負担するために、所得捕捉の不公平を是正することを優先すべきです。
 
 今の税制では、給与所得者が自ら確定申告をする機会が非常に限定されています。納税の重みを実感し、税金の使い道を厳しくチェックする意識を高める上でも、給与所得者の自主申告機会をことが重要です。
 
 
 
コラム:「担税力の調整」って何?

ここで問題です。

 AさんとBさんの2人がいます。2人とも、毎年300万円の所得があります。Aさんは所有する土地を貸しているのに対し、Bさんは会社勤めです。さて、どちらが税金を負担する余力があるでしょうか?

 Aさんは土地を持っている限り所得を得ることができますが、Bさんは仕事がなければ所得がなくなってしまいます。このように、資産所有者と労働者では税金を負担する力に差があり、その差を税制面で調整するのが「負担の調整」といわれるものです。

 
 
●退職所得控除の縮小
 現在、退職所得控除は、勤続20年までは年40万円、20年を超える分は年70万円の控除が適用されています。例えば、勤続10年なら400万円、25年なら1150万円(40万円×20年+70万円×5年)の控除になります。
 政府は、退職所得控除について、(1)勤続年数に関わらず控除額を一定にする、(2)控除水準の引き下げ、(3)短期間の勤続者については退職所得の1/2課税を行わない、といった見直しをしようとしています。
 見直し議論の背景としては、勤続20年を境に控除額が変わることについての不公平感や、本来賃金として支払うべきものを退職金に振り替え、短期間で退職したことにして税金逃れをするケースが見られたこと、などがあります。
 退職金は賃金の後払いであり、退職金課税のあり方は転職・退職後の人生設計に関わる大きな問題です。また、退職金は、一時金で受け取るか年金として受け取るかによって税金の計算方法が異なっています。こうした問題についての十分な議論をしないまま、控除の水準を引き下げることは問題です。
 連合は、1年あたりの控除額を一律60万円にすることを求めています。
●特定扶養控除の廃止
 特定扶養控除とは、納税者が16歳以上23歳未満の子を持つ場合に適用される控除です。特定扶養控除は所得税で年63万円、住民税で年45万円。一般の扶養控除(所得税38万円、住民税33万円)よりも大きい控除となっています。
 ところが、政府は、この控除を一般の扶養控除と同じ扱いにすることを提言しました。高校や大学、専門学校などに通学する子に高校や大学に通う子を持つ親にとって負担増となるだけでなく、これから子どもを持つ世代にとっても税制上のメリットがなくなる内容です。
 OECD(経済協力開発機構)の統計によれば、日本の教育費支出(高等教育)は、他の先進諸国に比べて私的支出の割合が高いのです。増税によって家計に占める教育費の割合が高まることで、経済力の強弱が子どもの学歴・学力に影響を与え、ひいては格差の拡大を助長することにつながります。
 控除を縮小するのであれば、その代わりにどんな配慮をするのかをセットで提起するのが筋であり、十分な手当がないのであれば、控除の縮小は認められません。
 政府税調の提言は、税制の問題を専門に議論する場である以上、他の政策との整合性に欠くものになりがちです。しかし、教育政策の面から教育費支出のあり方をどうするのかという議論がないまま、一方的に控除を縮小するというのは、少子化対策に逆行することにもなるのではないでしょうか。
 特定扶養控除は維持すべきです。その上で、高所得者ほど恩恵が大きい今の控除の仕組みを改めること、低中所得層の教育費負担を軽減する政策を求めます。
 
●配偶者控除の廃止
 「103万円の壁」 ――配偶者が働いても税金がかからず、かつ配偶者控除を適用できる収入の上限ラインが103万円(基礎控除38万円+給与所得控除65万円)であることをいいます。
 配偶者控除については、これまで、専業主婦と働く女性との間で税制上の不公平、女性の社会進出を妨げている、といった問題が指摘された結果、2004年度の税制改正で、配偶者特別控除(上乗せ分)の廃止、個人住民税の非課税措置の見直しが行われることになりました。
 税制が、配偶者の働き方に影響を与えないようにするのは重要なことです。同時に、様々な事情で働きたくても働けない配偶者への配慮も欠かせません。政府税調の提言には、その点についての言及が見られません。
 連合は、配偶者控除と扶養控除を統合することを求めます。また、夫婦の所得を合算し、それを二分した金額を夫婦それぞれの所得として課税する「二分二乗制度」を創設し、配偶者控除との選択ができるようにすべきです。
 また、女性の社会進出を進めるには、税制だけではなく、年金や健康保険の適用問題など、社会保障を含めた総合的な見直しが必要であることは言うまでもありません。政府は税と社会保障をあわせた改革を急ぐべきです。
 二分二乗制度(夫婦合算均等分割制度)とは、夫婦が同じ収入を得たものとみなして、夫婦の収入を合算した上で合計収入を均等分割し、夫婦それぞれに課税するというものです。
 連合は、配偶者控除を扶養控除に統合した上で、二分二乗制度との選択ができるようにすることを求めています。ただし、二分二乗制度は高所得層が減税となる問題が指摘されています。このため、一定の適用上限(給与所得1000万円以下)を設けるとともに、通常とは異なる税率を適用するといった調整を行うことが必要です。
 注)増税額の試算は、給与所得控除が2/3に縮小、配偶者控除が廃止された場合として
 
●どうなるの?今後の議論
 政府税調では、今年の9月ごろから来年度の税制改正に関する議論を本格化させます。そして、今年11月中旬ごろには、来年度の税制改正に関する答申が発表されます。
 ここまでに、私たちの怒りの声を政府税調に届け、安易な増税案を検討の舞台に上げないようにすることが大変重要になります。
 政府税調の答申が出されると、議論は政治の場に移ります。12月中旬には与党の税制大綱が発表され、財務省などが税制改正の具体案を作成します。そして、来年1月には税制改正法案が国会に提出され、国会での論戦がスタートします。
 また、政府税調は、数年おきに中期的な税制改革に関する答申を出しています。次の答申は2006年6月に出される見込みです。これに対しても、しっかりとチェックしていくことが大切になります。
 連合は、それぞれの議論段階に応じて、政府税調、各府省、そして各政党に対し、大増税を行わないこと、公平・公正な税制改革の実現を強く求めていきます。
 
●税調の議論をもっとオープンに










  −勤労者、消費者、若者、女性の代表を増やせ
 政府税調の総会は、インターネットでの中継、発言者名を含んだ議事録公開が行われています。しかし、総会の下に設置される小委員会については、発言者を伏せた議事録が公開されるだけです。
 先ごろ公表された政府税調小委員会の議事録には「専業主婦で何もしないのが多いんです。(中略)働かないで家でごろごろしている主婦が、子供を今産まないんです。」「パラサイト・ワイフというのができてきた。つまり、変な生命力のない人たちがたくさん生じていて、お金を持ってぶらぶらしている」などという、一方的で思慮に欠けた発言が見られます。
 政府税調の委員の多くは、学者、マスコミ関係者が占め、勤労者、消費者、若者、女性の代表はごく少数。税制の議論は様々な利害が絡むだけに、公平・公正な税制改革を実現するためにも、バランスのとれた委員構成にすべきです。
 また、政府税調に限らず、審議会の審議内容についてはインターネットで中継するなど、審議をオープンにすることが必要です。
 
 
 
 
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